サングラス

 友人が家を新築した、と言うよりも新築した新たなマンションに引越しした。そのお祝いに置時計が欲しいというので、家内に連れられて買いに行ったのです。青山の新しく建てられた建物の一階二階を占め、中央に中階段を設け、一部吹き抜けになった、なかなか洒落たつくりのお店なのです。

 こう言うお店をなんと言うのでしょう。ネックレスや指輪、革製品の財布やバックから小物入れ、壁掛けから置物、グラスや花瓶などのガラス製品、腕時計や掛け時計等、高級日用雑貨とでも言われそうな物が店内に上品に陳列されているのです。御婦人方には、長時間いても飽きないだろうと思われる品物ばかりです。

ハートマークを歪めたようなデザインで、銀製品と思われる携帯用のストッラプを見つけ、7000円という値札が付いていました。ストラップとしては大変な高値な物でしょうが、気に入ってしまい、高校生ぐらいの娘か孫でもいれば、絶対に買ってプレゼントしてしまうな等と、独り顔をくずしていたようです。

目的の置時計はお気に入りのが直ぐに見つかりましたが、店内をまわっているうちに奥さんがサングラスを見つけ掛けたのです。二つ並んでおりペアになっておりまして、当然の流れとして私も掛ける形になった訳です、これが意外と似合った様なのです。私にしては初体験です、サングラスと言う物を使用した事がありません、もちろん掛けた事も。

「どうですか?」とお店のお嬢さんに尋ねたわけです。「素適ですよー・・」「僕に惚れてくれる?」「えっ・・・・」。当然困った顔するわけですが、そういった言葉のやり取りを楽しめるようには成った様です。レジでお金を払う時念を押したのです、「今度このサングラスを掛けて正装して来るから、僕とデートしてね。美味しい物をご馳走するから」。

数日後、青山通りを歩いていると、軽く会釈をしながらすれ違う若い女性がいるのです。きょとんとしながら通り過ぎたわけですが、そのサングラスを買った店の女性だったのです。せっかく私を覚えていてくれて挨拶してくれたのに、無視してしまった形になってしまいました。なんと言う等辺僕なのでしょうね(一生、治らないなあ!)。

サングラスを掛け、自転車で表参道の並木通りを走っていたら、テニス雑誌の女性記者(二ヶ月位に一度のテニスの集まりで一緒になる方です)と偶然に出会ったのです、後輩と思える女性と二人ずれでした。急停車と同時にサングラスを外し、声をかけたのですが、驚きの表情と同時に出た言葉が「かっこいいー」でした。

紺のジーパンに白をベースした上に紺の模様のあるランニングシューズ、白のTシャツの上にオード色のような薄手の上着、短めで茶髪の頭、そしてサングラスを掛けて自転車。そんななりで表参道を走る姿が「かっこいい」と言うのです。まだまだ私にはよく分からない世界なのですが、一歩一歩オシャレになじんでいる様には思えます。

テニスの選手だった松岡修造の「新社会人は形から入れば良い」という洋服のコマーシャルの変形版かな、などとも感じています。自分の世界を作りながら、その形に合った姿を模索するのがオシャレの第一歩のような気がしてきました。     15年6月26


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