札幌、ススキノ

 「負けた」「お疲れさん、ゆっくり休んで・・うんぬんの後。ススキノに行って柔らかいエッセイを書いて下さい、期待しています。」これがテニスの試合が終わった直後の奥さんとのメールのやり取りである。札幌の町は初めてです、そもそも北海道にはあまり縁が無い。いやいや、高校の時の修学旅行以来であるから40年ぶりです。

札幌でのテニスの試合も私だけが負け仲間に取り残された。私の試合が終わったのは3時前でしたが、仲間と共に行動し、夕食を済ませホテルに戻ったのは9時もまわった頃であり、疲労も加わって、再び外室してススキノに行く元気は最早無く、早々と風呂に入り眠りに付いた。問題は独りになってしまった次の日です。

試合のために早朝に出かけてしまった仲間に置いて行かれ、一人寂しくホテルに残った訳だが、チェックアウトの時間もあり、夕方の飛行機の時間までサウナで過ごす事にし、10時頃ホテルを出た。駅のコインロッカーに荷物を預け、ススキノに着くまで30分もかからなかったと思う。まずは人が少ないと言う事に驚いた(新宿歌舞伎町と比較して)

町の中を一通り歩いてみようとふらふらしていると、程なく繁華街なら何処の街にでもいるおじさんに「遊んで行きませんか?」と声をかけられる。断ると「何処か探しているの?」と再び、「サウナが無いかな?と思いまして」「その角を曲がって・・・・うんぬん」と大変に丁寧に教えてくれた。何処の街でもおじさんは以外と親切だ。

その途中に「優良風俗店紹介所」という看板が目に入った。何処にでもあるのだなあと思いながら(新宿歌舞伎町なら私が知っているだけでも5店はあるから、10店以上はあるでしょう)何とかサウナを見つける事が出来た。元々高級なスポーツジムであった様だが、ごたぶんにもれず経営者の交代を余儀なくされ、サウナの部分を分離開放したようだ。

そんな訳で大変に高級感のあるサウナである。マッサージと昼食をすませのんびりと過ごしたが、夕方のススキノも見てみたいと思い4時頃再び街に出たが人影は少ない。程なく新宿にあるオッパイの店(見事なオッパイの群れを参照)のような感じの店を見つけた。1時間飲み放題4500円とある、しかも1階であるしまあ恐い事にもなるまいと思えた。

入り口でお金を払いながら「中でお金がかかるの?」「いいえ一切かかりません」との応えである。とはいえ初めての店であるから、多少の出費は覚悟をしなくては成らないだろう。路上から店の内部に通じる通路にドアが無い、2枚のカーテンがあるのみである。カーテンを開けて見える店内は路上と裏腹に満員だ、まずはその光景に圧倒された。

ひょうたん型の大きなテーブルに2本の太いパイプが天井まで立っている。そのテーブルの上にミニスカートのお嬢さんが二人立ち、お酒類の世話をやいているようだ。天井の方に酒類が逆さに吊るされ、コップにお酒を注ぐように成っている。そしてそのテーブルの周りに一段高くカウンターのようになっており、客が肘を付きながら酒を飲んでいる。

30人程の客であろうか、まだ23人程椅子に余裕があるようで、その一つに通された。ほかに四人ほどのミニスカートのお嬢さんがカウンターに座り客と話をしている。後ろを振り返ると壁際にシート型の椅子がある、約20人ほどが座れるであろう。程なく私のとなりにもミニスカートのお嬢さんが移って来てくれ話しだした。

「北の国から」というテレビドラマになった富良野という町の出身だそうだ、たわいの無い話を34分程したであろうか、次へと移って行ってしまった。する事はもはや何も無い、ただひたすら無心にビールを飲む。ふと見上げるとテーブルで世話をやいているお嬢さんの下着が無い、もう独りの方にも目をやるがやはり下着は無い。

歌舞伎町でノウパンしゃぶしゃぶと言うのが一世を風靡したが、こう言うものかと頭をよぎった。こうなるとビールを飲む手も休みがちとなり、ひたすら視線だけが動く。やがてこのお嬢さんの微妙な動きに感心させられる。見せまいとすれば見せないですむのである。ところが見せすぎない程に見せる、この兼ね合いが実に見事なのである。

IP 7000円、8時より8000円との張り紙を見つける、これは別の個室での特別な行為なのだなと思う(その程度の知識はある)30分もするとさすがに退屈してきて私の悪い癖が動き出し、ボーイさんに尋ねだした。「ヘルスの子とエステの子がいます、予約が必要なので入り口の受け付けで相談してみて下さい」との事である。

飛行機の時間もあるしそろそろ帰ろうと歩き出すと、受付で止められた。「お客さん、今帰ったのでは豚カツを食べて、側の衣だけを食べて中の肉を食べないようなものですよ、もうちょっと座っていて下さい」と半ば強引に押し戻された。飛行機の事もあるのでウーロン茶のお変わりを頼み、何と無く手持ちぶさたを感じながらも視線だけは動く。

30分程してショーとやらがやっと始まった。一度全員引き上げたが、4人のお嬢さんが洋服を持ってカウンターに乗り、そこでおもむろに着替えを始めたのである。風呂あがりの姿になり、下着から着け始めたのにはいささか驚いた。終わると「椅子に座ったまま少し後ろに下がれ」と言う、前に通路の分の空きが出来、そこをお嬢さん方が移動する。

あと4人お嬢さんが出て来て、計8人であったと思うが、まずは膝の上に正面にまたがって座ってくれる、お尻を触ってよいとの事である。次は反対に後ろ向きに座った、今度は後ろから手をまわしオッパイをさわれという。今度は全員立たされて椅子をカウンターの下に入れられ、後ろの方に整列させられた。お嬢さんが後ろ向きに前かがみとなり、お尻を客の股間に摺り寄せ振るのである。この時は腰に手をやる事を命ぜられる。次は前向きに前かがみとなり、ズボンの上からであるが手で股間をさすってくれながら視線を上に向け見つめ合うのである。これが実に色っぽい。

お客が4人に対しお嬢さんが1人ぐらいの比率である。順番が来るまでの時間の気まずさの方が大きい、視線のやり場に困りながらもひたすら待つしかない。これも相互鑑賞と言うものの一つかなどと馬鹿な事を考えながらも初体験を味わっていた。これでこのショーとやらは終りかと思ったら、今度は一列に並べという。

入り口と反対側に小さな舞台がある、そこにお嬢さんが5人だけ並んでいる、広さの問題であろう。そこにお客が5人ずつ呼ばれるのである、たぶんストリップのカブリツキとはこう言うものではないかと思った。4500円でお酒を飲み放題で、風俗のフルコースと思われるものを味あわせてくれるのである。どう見ても安いと思えた。

6時を過ぎたばかりの時間である。これからが佳境に入るのであろう、この時間に店を後にする者は私の他にいない。「どうですかお客さん、先ほど帰らなくて良かったでしょう」と声をかけてくれたのは受付で押し返してくれた男の店員さんである。「新宿にもこんな店は聞いた事が無いなあ」「もう許可が下りませんので全国で1店だけです」との答え。

「開店してどのくらいですか?」「20年です」。通りすがりにそんな会話をしながら通りに出た。20年前といえば大阪にノーパン喫茶と言うのが出来、新宿歌舞伎町にヘルスと言う風俗が出来た頃である。その時にもはやこんなフルコースの店を作ってしまったススキノは最も進んだ街なのかも知れない。その上、独占企業ときている。

お巡りさんも粋な計らいをして許可をしてあげたら全国に広まるであろうに。いやいや、広まってしまったら直ぐに飽きられてしまうな、それじゃつまらん。ここの1店だからこそファンも出来て、東京や大阪から飛行機で来る客もいるかも知れない。北海道の不況は深刻だと言うし、その方が経済的効果も大きいかも知れないな。

何と言ってもあのミニスカートのお嬢さんのしぐさだな、見せなかったら客からのブーイングが来るだろうし、見せすぎてしまったら、次ぎへのステップに進まず売上増進に結びつかないだろうからな。自主規制しているバランスが大事なのだな、経済と言うものは何時の時代でも何処まで規制するかというバランス感覚が大事で、これが政治の役目だな。

それに営業許可を取っているという事と、お客を絶対に満足させているという自信がドアを付けずに2枚のカーテンに成っているのだな。私は一見して旅行者だと分かるはずだし、こんな一元の客でも大切にして、このまま返しては再び来店する事は無いだろう、という判断の下、踏みとどめたのさせたのは、遠くから来る客が多いに違いない。やはり20年間も続けるという事は大変な営業努力をしているのだなあ。

こんな事を考えながら街をぶらついていたら道に迷ってしまった。たずね事をする時は必ず男女を問わず若者と決めている、ただし1人で行動しているお嬢さんは禁物だ、3人グループがベストである。おおらかに応えてくれて時には世間話に及ぶ事もある、そんな話が面白い。幸い3人連れのお嬢さんを見つけたが道案内の答えだけで終わってしまった。

コインロッカーからテニス道具を出し、札幌駅に向かう途中に2人連れの若い男を見つけ尋ねたところ、彼等も駅に向かうと言うので同行する事にした。牧場で働き、牛の妊娠の研究をしているとの事である、「牛も人間も同じだろう、君は子造りが上手いな」「いやあ」と言いながら赤くなっている純情な青年だ。彼女はいないような気がする。

時々、東京にも来ると言うので連絡先を教え、尋ねて来るように言い、彼の住所も尋ね、私の本を送ってあげる約束をして駅前で別れた。北海道で働く若い青年と知り合えた事は大変な収穫であったかも知れない、これからのメールのやり取りに興味が沸くところである。これも旅の大きな楽しみの一つであろう。

テニスの成果は一向に上がらない、素質はいま一無いようだ(いま二かもね?)。それにひきかえ初めての街でこのような店を見つけてしまう臭覚は、風俗ルポライターとしての才能は抜群だな。よーし、来年こそ「札幌」ガンバルぞー!!       1579


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